東京国際映画祭 この夏が終わるころ、何かがはじまる

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キャスト

2025.9.5㈮より
シネマテークたかさき 公開決定

STORY

あらすじ

脚本家のややこと
8歳の少年タカシが体験する
土地の記憶と創作”が入り混じる
不思議なひと夏

脚本家のややこは、昨年死んだ祖父・隆二郎の古民家に滞在し、祖父の遺した日記を題材に新作を執筆している。そんなさなか、姉の仕事の都合で、夏の間だけ甥(おい)の少年タカシを預かることになる。これまで交流のなかった2人だが、ややこはタカシを昔の自分と重ね合わせて執筆中の脚本に取り入れようとする。そんな思惑も知らず、タカシは夜中に見た“黒い影”や謎めいた青年、ややこの元恋人との出会いを経験しながら夏を過ごす。やがて夏の終わりに、タカシは深い石切場の奥で隆二郎の古い記憶に触れる。そしてややこは、創作を通して自らの“罪”と向き合うことになる。

INTRODUCTION

作品概要

宮藤官九郎・甫木元空・今泉力哉などの
数々の話題作に助監督として関わってきた滝野弘仁、
映画と人生に正面から向き合った、渾身の長編デビュー作。

本作監督の出身地である石川県小松市の古民家と石切場を舞台に、脚本家のややこと8歳の少年タカシが体験する“土地の記憶と創作”が入り混じる不思議なひと夏が描かれる。

ややこ役は、濱口竜介監督『親密さ』にて鮮烈な印象を残した平野鈴。タカシ役には、今作が映画初出演となる渋谷いる太。さらに『雨の中の慾情』の中村映里子をはじめ、大場みなみ、松浦りょう、内田周作など話題作で活躍する実力派俳優が集結。竹内啓や星能豊といった石川県出身の俳優も多数出演している。

創作は、人の心を揺さぶり、生きる力を与えると同時に他人の人生を奪うこともある。その境目で創作を続けるややことそれを見つめ続けるタカシの眼差しは、様々な作品に関わってきた監督自身の姿でもある。いまの自分と幼少期の思い出、そして生まれる前の記憶。あらゆる人々の時間と場所を呑み込み、暗がりの中でじっと「くま」が目を光らせているー。映画と人生に正面から向き合った、渾身の長編デビュー作。第37回東京国際映画祭NIPPON CINEMA NOW正式出品。

CAST

キャスト

平野 鈴Hirano Rei

ややこ

濱口竜介監督『親密さ』、染谷将太監督『シミラー・バット・ディファレント』、上村奈帆監督『僕の一番好きだった人』などをはじめ、実験的かつ人間関係や感情の機微を描くような作品に多く出演する。近年ではbutaji『free me』、曽我部恵一『愛と言え』のMVにも出演。さらに、スチール作品のプロデュースや撮影、書籍やWebZINEへの寄稿、ポッドキャスト配信など、活動の領域を広げている。地に足の着いた安定感と不穏な危うさが共存する不思議なバランスを持つ。

渋谷 いる太Shibuya Iruta

タカシ

2014年11月12生まれ、東京都出身。5歳で子役としてデビュー。主に広告・CMに多数出演し、本作が初めての映画出演となる。24年に日本テレビ系『放課後カルテ』三島朝陽役を演じ、愛らしいルックスと自然体な演技で話題に。弟は、映画「BAUS 映画から船出した映画館」にも出演していた渋谷そらじ。兄弟揃って今後も大注目の子役だ。

中村 映里子Nakamura Eriko

佐奈子

1988年山形県生まれ。2006年から映画に出演。これまでの主な出演作品に、映画「カケラ」(安藤モモ子監督)、「愛の渦」(三浦大輔監督)、「愛の小さな歴史」(中川龍太郎監督)、「私たちのハァハァ」(松居大悟監督)、「裏切りの街」(三浦大輔監督)、「予兆散歩する侵略者 劇場版」(黒沢清監督)、「結婚」(西谷真一監督)、「わたしの見ている世界が全て」(佐近圭太郎監督)、ドラマ「大病院占拠」(日テレ)、「ギバーテイカー」(WOWOW)、「アンメット ある脳外科医の日記」(カンテレ)など多数。近年では映画「雨の中の慾情」(片山慎三監督)にヒロイン役で出演、今年公開された作品に「雪子a.k.a」(草場尚也監督)、「逃走」(足立正生監督)。

大場 みなみOoba Minami

笛村とも

大学卒業後、舞台での活動を本格的にスタート。近年はメインキャストで出演した映画が国内外の主要映画祭に続々とノミネートされるなど、気鋭監督の作品に欠かせない存在となりつつある。主な出演作に、映画「あるいは、ユートピア」(監督:金允洙)、「椰子の高さ」(主演/監督:ドゥ・ジエ)、「すべての夜を思いだす」(監督:清原惟)、「小さな声で囁いて」(監督:山本英)。舞台に、くによし組『ケレン・ヘラー』(演出:國吉咲貴)、『セツアンの善人』(演出:白井晃)、ロロ『オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト(カタログ版)』(演出:三浦直之)、贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』(演出:山田由梨)など。25年春に演劇企画「大場みなみの戯曲のお彼岸」を立ち上げた。

内田 周作Uchida Syusaku

木下 幸雄

兵庫県出身。沖縄在住時に地元の劇団に所属し、舞台・ドラマ・CMなど多方面で活動。その後、上京し、『​この空の花 〜長岡花火物語』(​12/大林宣彦監督​)出演を機に、映画を中心に活動を展開している。第37回東京国際映画祭では、『くまをまつ』 が正式上映されたほか、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の受賞作として『嬉々な生活』も上映され、自身の出演作2作品が同映画祭で上映された。​代表作​に『野のなななのか​』​(14/大林宣彦監督​)​、『変魚路​』​(17/高嶺剛監督​)​、『二十六夜待ち』(17/越川道夫監督)など​がある。

松浦 りょうMatsuura Ryou

河合 尚美

徳島県生まれ。2014年に映画「渇き。」でデビュー。主な出演作に、映画「眠る虫」(2020年・初主演・MOOSIC LAB2019長編部門グランプリを獲得)、映画「赦し」(2023年・主演)、Amazon「あるいは、ユートピア」(2024年)、映画「オン・ア・ボート」に出演。公開予定の映画・ドラマなど待機作が複数控えている。
Instagram @ryomatsuura

竹内 啓Takeuchi Akira

1995年生まれ、石川県出身。 透明度の高い存在感と鋭い眼差しで、一度見たら忘れられない印象を残し、多くの若手クリエイターから支持を得る。 主な出演作は映画「にびさびの巣」(主演/監督:岡⽥深)、「明日を夜に捨てて」(監督:張蘇銘)、「チョコレートコスモス」(監督:杵村春希)、「⾸」(監督:北野武)、「孤狼の⾎ LEVEL2」(監督:⽩⽯和彌)、テレビ朝⽇「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」(2022)、なかないで、毒きのこちゃん企画公演「もう⼆度と⾔えなくなるねおやすみと」など。 2025年以降も映画「渡り鳥も聴こえる」をはじめ複数の作品が控えている。 特技は⾞の運転、スペイン語、サッカー。

STAFF

スタッフ

監 督・脚 本

滝野弘仁TAKINO Hirohito

984年石川県出身。2012年、監督作『もしかしたらバイバイ!』が国内外の映画祭で入選(高畑鍬名との共同監督)。近年は短編作品が水戸短編映像祭、仙台短編映画祭などで上映が行われる。

助監督としても多数の作品に参加しており、今泉力哉・甫木元空らの映画やDisney+『季節のない街』などのドラマ、さらにはCM・MVでも幅広く活動している。

劇中でややことタカシが生活する一軒家は、僕の亡くなった祖父の生家です。 この映画の脚本もその家で書きました。 耳をすませば虫や動物の鳴き声が聞こえ、土や植物の匂いが家の中からも感じられるような、そんな土地 です。子供の頃あの家に泊まりに行った記憶を辿ると、懐かしいような、でも少し怖いような。それは確 かにあったことなんだけれど、なんだかずっとうわの空のような。今となっては、そんな薄ぼんやりとした ことしか思い出せなくなっています。僕が忘れてしまったあの頃の記憶はもう、どこか遠いところで消えて しまったのかもしれない。でももしかしたら、あの石切場の暗がりのいちばん深いところで、こちらをじっ とまっているのかもしれない。まるで、冬眠しているくまみたいに。
撮 影

米倉 伸yonekura shin

1992年生まれ、京都造形芸術大学 映画学科出身。近年手がけた作品に、山西竜矢監督『彼女来来』(21)、甫木元空監督『はだかのゆめ』(22)、大江崇允監督『鯨の骨』(23)、大美賀均監督『義父養父』(23)、山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』(24) 、甫木元空監督『BAUS』(25)など多数。

照 明

小川大介ogawa daisuke

近年手がけた作品に、『ネムルバカ』(25/阪元裕吾監督)、『嗤う蟲』(25/城定秀夫監督)、『おんなのこきらい』(15/加藤綾佳監督)、『口裂け女2』(08/寺内康太郎監督)など。

録 音・音 楽

松野泉matsuno izumi

映画製作に携わりながら、ミュージシャン、フリーの録音技師として活動。ロックバンド『マタマタ』、キンカン部。CD「星屑の国」、12inch「あそぼ」発売中。京都在住。猫ニ匹。監督作に『さよならも出来ない』(2016)など。参加作品に『悪は存在しない』(23/濱口竜介監督)、『ピアニストを待ちながら』(24/七里圭監督)、『黒の牛』(24/蔦哲一朗監督)など多数。

スタイリスト

小宮山芽以

ヘアメイク

河本花葉

監督補

渡辺直樹

助監督

登り山智志

制作担当

佛木雅彦

特殊造形

田中佑佳(Label A)

劇中脚本

高畑鍬名 滝野弘仁

編集

冨永圭祐

音楽

松野泉

宣伝デザイン

畑ユリエ

アソシエイトプロデューサー

鈴木徳至 加藤綾佳 床井祐二朗 田中厚朗

宣伝・配給協力

ブライトホース・フィルム

製作協力

GOLD FISH FILMS

COMMENT

コメント

そんなにたくさんの映画を観てきたわけではないけど『くまをまつ』は他のどの映画にも似てない。

それなのに共感できるのは、幼少期の夏休みという、尊くムダな時間が過不足なく描かれているからだ。

大人の都合で与えられる受動的な自由時間。親戚の家の暗がりとか、そういえば怖かったもんなあ。夜中の物音とか。

オリジナリティと既視感。潜在意識に擦り込まれていた映像を改めて観ているみたいだった。

滝野監督はこういう繊細で美しい映画を撮る人なんだ。付き合い方を改めないといけないなと思った。

宮藤官九郎脚本家

人の記憶は、感情と共にそこら辺に落っこちているのかもしれない。

それに触れたり、拾ったりするのは、覚悟と体力がいることなのかもしれない。けどもその行為は、人に成長をもたらせてくれるのかもしれない。

堂々としていて腰の座ったショットの連続が潔く、その視点から観る2人のある種の冒険が、観る者に栄養を与えてくれる。チャーリーさん素敵な映画をありがとう。

染谷将太俳優

じっと「見る」ことで時空を超えた記憶に出会い、ひそやかに成長してゆくタカシと、おぼろげで曖昧な記憶を脚本に書き留めることで忘却の不安から逃れようとするややこの対比が面白い。

最後、ややこは書くことをやめ、タカシは目を閉じる。

書かずとも見ずとも、この夏の記憶はいつでも取り出せる”現在”となって彼らの中で生き続けるのかもしれない。

横浜聡子映画監督

創作において。恋愛において。人間関係において。

相手が自分のためになにかしてくれることは当たり前じゃないんだと思う。

会えてしまうこと。会わない方がいいこと。会えない方がいいこと。

美しい声と景色を浴びながらいろんなことを考えました。

今泉力哉映画監督

子供の頃誰もが迷い込んだであろう永遠に引き伸ばされた夏。

舞台は監督の故郷石川・小松市。国道から見える石切場。あの大きな穴に人々は吸い寄せられる。

あの闇に堆積した記憶の中で鳴り響く、貴方や私の物語。

くまは必ず待っている。

忘れられない夏がここにはある。

甫木元空映画監督・ミュージシャン

夢と現、創作上の妄想と現実の生々しい人間関係の葛藤、過去と現在、いくつもの線が同時に走って複雑でありながら腑に落ちる、観ている側の身体にしっかりと入ってくる物語は、たしかな構成力と演出力があってこそだと思います。

主人公の少年の目を通した不思議な旅行がとても心地よかったです。

玉田真也劇作家・映画監督

日めくりカレンダーをめくると、ある一日が始まって終わる。

そのような、関係があるともないともいえない、一つのアクションとそれを受け止める世界との間にあるわからなさを静かな驚きをこめて描いた映画。

記憶と創作をテーマとするこの作品で、加害者の居直りや忘却に都合のよいわからなさ、不確かさに陥らないところも良かった。

西口想文筆家・労働団体職員

『くまをまつ』は不思議な映画だ。

祖父が住んでいた古民家で少年がひと夏を過ごす、というプロットから想像されるようなノスタルジックな雰囲気はそこにはない。

今、映っているものが現実なのか幻想なのか判断し難い不安定さが全編にあふれ、見る者の心は強く揺さぶられる。

そのいい意味での不安定さを見事に体現しているのが平野鈴の独特な存在感だ。

監督デビュー作にしてこの世界観を創り出した滝野弘仁の今後の活動からは目が離せない。

市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクター

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